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不定期雑記。ひとりごとやもえがたりなど。リンクフリーです。
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続きから神業パラレルでタナッセと主人公。短いよ。


 ぼふ、と膝の上に頭が乗せられる。
「……何の真似だ」
「膝枕です。甘えさせてください」
 眉をしかめ出来得る限りの仏頂面で見下ろした相手は、奇襲によって占拠した陣地を確保するようにさらに深く頭を乗せてきた。合わさった目が悪戯に細まり、ついっと伸ばされた指先が前髪を軽く弄んですぐに離れていく。
「君はあったかいねえ」
「お前の体温が低いんだ」
 本物の枕よろしくごろごろ寝返りを打たれ、時折厚かましくも硬いなどと文句をつけられてだったら起きろと言い返し、それでも無理矢理頭をどかそうという気にはなれずに膝を提供し続ける。ふと気まぐれに手を伸ばして乱れた髪を梳いてやると、気持ち良さそうに喉を鳴らして洩らされた笑い含みの吐息が布越しに脚をくすぐった。
 彼女はたまに、こんなひどく他愛ない我侭を彼に仕掛ける。
 ───釣り合いを取っているつもりなのか、と。皮肉と痛みを滲ませた彼の表情には、全く気を払わずに。
「何がしたいんだお前は」
「快適なお昼寝」
「……欲しいものはないのか」
「君の笑顔があれば十分さー」
 問うのは大概彼の方で、満足のいく答えが得られたことは一度もない。
 最初から承知の上だ。お互いに。
 彼女は彼のものだけれど、彼は彼女のものではない。
 そして彼女は彼の意思によって生き長らえた、死を纏いし生ける影。死人に特権があるとすれば、いつでも傍観者でいられることだ。彼女はその特権を遺憾なく行使して憚らない。
 その一方で、何も望まぬ彼女は望まぬことで彼の鬱屈を深めてしまう代償のように、些細な戯れで停滞した日常を埋める。
「その話し方はいい加減に改めたらどうだ。お前はもう子どもではないのだぞ」
「うん、善処しとく」
 僅かにでも未来を仄めかす言葉はいつだってさらりと受け流される。優しくない思いやりを受け入れるしかない彼は、小動物のように身を丸める彼女の髪をひたすら撫でて整える。
 熱が高まる。おかしくなりそうなほどに。ひんやりとした彼女の低温を感じるたび胸に満ちるそれは、悲しみに限りなく似ているようでいてどこかが決定的に違っていた。
 この熱の正体を突き止めることはできる。もうずっと前から生まれていた感情に、名前を与えることは。今なら。今さら。
 彼女がそれを決して望みはしないだろうことを、彼は知っている。
 だから熱はひたすら彼の中に蟠り、彼女には移らない。
 彼女は彼のものだけれど、彼は彼女のものではない。
 彼は彼女のものには、なれない。


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また調子こいて口滑らせていちゃいちゃ書こうとしてそもそもいちゃいちゃなシチュの引き出しがろくにねえ自分に絶望した。
この王子は精神的にドMなので「じゃあ一緒に死んで」とか言われたらむしろ本望かと。言われないけど。
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現在「冠を持つ神の手」にだだはまり。
二次創作したり人様の二次創作で萌えたぎったり。
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