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以下、エディタ整理してたら出てきたプチ短文供養晒し。南無。
いつもの巡回の途中、中庭の片隅で萎れた花みたいに蹲るそれを見つけたのは本当に偶然だった。
わざわざ自らそれへと近寄ってみたのは気まぐれというよりも気の迷いと称した方が適当であろう。自分は他者が厄介事に巻き込まれる様を見物するならともかく己がその当事者となるなど真っ平御免被る至極まともな感性の持ち主であり、それは何だか見るからに厄介そうな様相を呈していたのだから。
「そんなところにいつまでも座ってたらドレスが汚れますよー」
声をかけると、低い切り株に腰かけ俯いていたそれはゆるりとこちらを仰ぎ見た。
「残念ながらもう手遅れだよ。でも忠告ありがとう」
色の失せた唇が紡いだ声はひどく掠れてか細いくせに、響く意思にはまるで隙がなかった。華奢な首筋に透けて見える血の筋のあか、を鮮やかに映えさせてしまっている、その白さ、に。一瞬確かに無意識に目が奪われる。
ああやっぱりめんどくさそうだなと小さく嘆息した。ついでに、グレちゃんならこの時点で大慌てだろうなあさぞ面白い見物になっただろうに惜しい奴を失くしたもんだと過日衛士を辞して故郷に帰った元同僚へ思いを馳せてみる。
「お気遣いどうも、ハイラ殿」
儚くも強かな微笑み。印象の定まらない女だ。裾が地面に擦れて汚れてもなお立とうとしないのは立てないからなのではと推察できる程あからさまに病弱そうな割に、どこか安易に手を差し伸べてはいけないような雰囲気もある。
「私の名を覚えて頂いていたとは実に光栄だね、ヨアマキスの奥方」
まあそれでなくともほいほい関わるべき相手ではないのだが。
以前幾度か揶揄混じりに用いた呼称はもう使えない。使えない、という事実そのものがすでに国の根幹を揺るがしかねない異常事態だ。あの田舎臭いチビガキがよくぞここまでと感嘆するぐらいには掛け値なしな美貌といかにも脆そうな細すぎる肢体を持つこれは、今やこの王城にあってはどこまでも異物であり、決して世に解き放ってはならない存在。
つまりは厄介者ということだ。そして。
(……神様ってのはどうやら面食いじゃあないらしい)
空々しい笑みを向けたその先、前髪の間から見え隠れする青白い額には、何も刻まれてはいなかった。
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「人妻!逢い引き!」と唱えながら書いてた気がする。