ゆりりん難しいよゆりりん

レハゲもご好評頂いていて末席の身ながらヒャッホウです。
EmptyMindの方はまたなんか書き直したりしつつ。

続きから、ツイッターで呟いてたユリリエと主人公とおまけのタナッセ。

「友情が恋情より清らかなものとは強ち申せませんわね」
　ふわり、ドレスの裾を揺らめかせて囁けば、未だ幼い容貌の彼は軽やかにステップを踏みながら目を瞬かせた。
　何のことだと問うてくる無垢でありつつ聡明な眼差しへ微笑み返し、楽曲に合わせてさりげなく体の向きを切り替える。
「あのお馬鹿さんをご覧なさいな」
　彼の視界にも入ったであろう、大広間の片隅でいつものように壁の花を決め込みいつにも増して恨みがましい空気を纏った不肖の従弟。
　情けないにも程がある姿を横目で見やり、ため息混じりに言葉を続けた。
「鬱陶しいこと。あれときたら先程からずっとああして私達を睨みつけておりますのよ。仲間に入れて欲しいなら素直にそう言えば宜しいのに」
　ふわり、くるり。足は止めない。世界は廻り、踏み込めば退かれ退けば踏み込まれる堂々巡りの情熱に、終わりはまだ来ない。
（だから今は私の時間。今のこの方は、私の）
　そう思うことに日頃希求している昂まりはないが、認めよう。
　優越感は確かに存在する。
　何も彼が神の寵愛受けし候補者だからといった俗めいた話ではなく。この華やかな戦場にあってはひどく不釣り合いな、ごく無邪気で滑稽な感情。幼稚な従弟殿への幼稚な優越感。
　我ながら呆れた話だけれど、こんな自分も案外嫌ではなかった。ましてこんな自分を引き摺り出してくれた彼は尚のこと。
「仲間、に？」
　彼はますますきょとんとした様相を見せた。
「僕に無駄に怒っているだけじゃないかな。いつもそうだし」
　まったく日頃の行いは肝要だ。
　自覚的に傲慢な思考と共に口元を緩めてそっと身を寄せる。顔を近づけ親しげに言葉を交わす様が、生まれてこの方充実した人間関係といったものにはとんと縁のない孤独な従弟の目にどう映るかは容易に想像がついた。
『あれがいつも貴方に突っかかっているのは単に貴方と話がしたいからで、今は貴方と普通に交友を深めることの出来る私を僻んでいるのですわ。お友達が一人もいない捻くれ者って本当に面倒で迷惑な生き物ですわね』
　とはあえて言わない。……たぶん、言う必要などとうに失せている。
　踊り終わって彼から離れれば、あの仕様のない従弟はまた性懲りもなくやって来て彼に益体もない嫌味をぶつけるのだろう。無論言われっぱなしで済ませる彼ではないから、即座に反撃は返されることだろうが。歓談という名の慇懃な毒舌合戦は大層盛り上がるはずだ───僅かばかり癪な可能性ではあるが、ひょっとしたらこの舞踏の時間よりも長く、続いてしまうかもしれない。
　そんな彼らの瞳はさぞや怒りと苛立ちに満ちて、そして彼らが互いに相対するその時だけ生じる剣呑な精彩を放ち、鮮やかに煌めくのだ。
　そこにあるものは───本人達も含めてそれと知る者は極めて少ないけれど───きっと。
「罪作りな方ね、レハト様」
　けれど苦笑するしかない。何しろ友情に浮気など定義しようがないのだから。
　───むしろ非は、あまりに捩れて孤独な私達の方にこそ。それでもそんな歪みさえ貴方は容易く赦してしまうのかしら。
　曲が終わりに近づいている。握った小さな手を離さなければならなくなるまでもう少し。
　それでも世界は変わらず廻る。
　私の、彼の、あれの抱く想いと共に。
　恋ではなく、愛でもなく、けれど虚飾まみれの我が身が得た得ざるを得なかった何よりも何よりも尊いものと言い切れる程度には切実でかけがえのない、想い。
　私達に唯一共通するその間柄の名を、友と呼ぶ。

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ユリリエ→主人公：親友
主人公→ユリリエ：親友
主人公→タナッセ：理解はできるけれど
タナッセ→主人公：似ているゆえの憎悪

印友反転シリーズ（←今考えた）ゆりりん視点。ゆりりん……のつもりなんだお……。
この後に神業とかやっちゃう王子は本当に詰められるべき。