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不定期雑記。ひとりごとやもえがたりなど。リンクフリーです。
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続きから小話、タナッセと主人公。
設定はどれでもいける感じなんでお好みでどぞ。


 甘い、むせ返るように甘ったるい香り。
 顔に、胸に、何処からかはらはらと落ちて積もる、湿って軽い何かのくすぐったい感触。
 離れた遠くからは小鳥の囀り。
 すぐ隣ではくすくすと笑い声。
 瞼を上げる寸前に感じ取ったそれらがひどく長閑に思えて、タナッセは知らず微かに口元を緩めた。
 視界は遮られていた。右目は赤、左目は紫色の何かで覆われている。首をぶるりと振って顔の上にのさばる落下物を振り落とすと、「あ」と小さな声が耳に滑り込んできた。
「あーあ、起きちゃった」
 声の主は覆い被さるようにタナッセを覗き込んでいた。つまらなそうに唇を尖らせつつもどこか楽しげに、何故だか両手一杯に色とりどりの花々を抱えて。
 タナッセは一瞬呆気に取られ、次いではっと跳ね起きた。
 肩や胸に積もった花が落ちていく。落ちた先である寝台の敷布の上にも既に多種多様の花々が散乱し、複雑に絡まり合い溢れ返る香りを惜しみなく周囲へ振り撒いている。
「もうちょっとで全身お花で埋められたのに残念。っとごめん言い忘れてた、おはようタナッセ。今日もいい天気だね」
 窓から射し込む陽の光を浴びてにこにこと微笑む彼女の顔を見つめ、タナッセはとりあえず深呼吸をした。
 甘い。鼻先から侵入してくる花の匂いの濃密さに、息もできなくなりそうだ。
 持っていた花を手持ち無沙汰に見下ろした彼女が何を思ったか、ぱっと上方に放り投げる。そのまま宙に浮かぶ訳もなく、放り出された花々はぼたぼたと落ちる。彼女と、彼女のすぐ傍らで身を起こしたばかりのタナッセの上に。
 花が降る中、笑う彼女。無論状況もわきまえず見惚れたりなぞは断じてしていない、つもりだ。
「……レハト……」
「何? タナッセ」
 一体何の戯れ事だ、こんな大量の花をどこから調達してきたのだ、成人した身でこのような悪ふざけに興じるなど浅薄にも程がある恥を知れ、大体なんでそんなに楽しそうなんだお前は、ああ頭に花など乗せていや似合っていない訳ではないが───言いたいことがあまりに多すぎて頭痛を覚えながら、寝台の一角、比較的花の少ない箇所をびしっと指差した、
「そこに直れ」


 小一時間程の説教の後、レハトを問い質した結果は次のようなものだった。
「夜中に目が覚めて、何だか目が冴えちゃって。君寝てるし起こしたら悪いと思って一人で中庭散歩してたら通りすがりの親切な占い師さんがお花をくれて、明日───もう今日だけど、とにかく大切な人に花や贈り物をあげる日なのよって言うから。衛士を呼べって? うーん、思い出してみればちょっと……ええと、結構、かなり不審だったような気もするけど、何でかその時はへーそーなんだーって納得しちゃったんだよね。……あれ。ほんとに何でだろ。え、やだな、大丈夫だってば。あ、それより来月の今日は君がお返しをするんだってさ。僕は焼き菓子希望ね」
 尋問後、さらに小一時間説教が追加された事と、しばしの期間警備の強化が為されたのは余談だ。

 それから一月後、彼女の目覚めは焼き菓子の匂いに包まれたものであったとか、なかったとか。


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一応バレンタインネタ。
ご本家効果で魔の十五歳について語り合いつつ選択の余地とか性欲意識する間もなくアレやコレやせざるを得なかった神業パラレルレハ子さんの境遇にひっそりどんより色々なもんを噛みしめる哀れッセさんとか考えないでもなかったけどなんかワンパタの罠に陥ってる気がしてやめた。

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現在「冠を持つ神の手」にだだはまり。
二次創作したり人様の二次創作で萌えたぎったり。
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