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不定期雑記。ひとりごとやもえがたりなど。リンクフリーです。
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罪悪感も突き抜ければ推進力になるんだねって外伝の最新話読んで知ったさ。
ヴァイル好きさんごめんなさいと最初に謝っとく。管理人も大好きなんだぜ!説得力皆無だけど。

続きから前回の続き、ヴァイルと主人公。

追記。
一応ここで完結っていうかあとはサイトに上げる時にでもちょろっと加筆する感じかなこれ。すっきりしてなくてごめん。
さて、次はテエロさんだ。


 羽のように軽い体を抱き上げ、寝台へ運ぶ。柔らかな敷布の上にそっと横たえる。
 我ながら手慣れた所作だ。こういう行為に及ぶのは───『たまの息抜き』と称し部屋に誘い込んで酒盛りの最中一服盛って昏睡させた彼女をいいように扱うのは、これが最初ではなかったし最後にするつもりもない。
 自分がされたこと、されることなど露とも知らず、彼女は静かに胸を上下させている。子どものような顔で眠っている。
 すべらかな頬を慈しむように一撫でして、ヴァイルは白々しい程の慇懃さで彼女の手を取り甲に口づけを落とした。

 しゅるりと布の擦れ合う音が室内に響く。
 やはり慣れた手管でゆっくりと露にした素肌に手を這わせながら、鎖骨の陰から首筋、耳元へと唇を移動させて、囁いた。
「胸、大きくなんないね。大人のくせにぺたんこじゃん」
 まだ一年と経っていない過去の、彼女の手を引いて城中を駆け回っていた頃の口調とよく似せた声音を意識して出してみる。つまらなそうに尖らせた唇で耳朶を甘噛みし、ぺろりと舐める。
「レハトのひんにゅー。発育不全。色気なしのちんちくりーん」
 無邪気を装った声が惨めだと思った。口先ばかり戻り得ぬ過去をなぞりながら卑猥に丹念に動き回っているこの指先は何だ。粘ついた熱に浮かされたこの思考と体は。
「なんで変わってくれないかなあ。俺がこんなに……してるのに」
 どうしたって誤魔化しようがない。生唾を飲み込んで意識のない彼女を薄汚い欲の捌け口にしている自分は恐ろしく惨めったらしくて無様で救えない、男だ。
 だから───今夜も願う。
「……ねえ。早く女になってよ、レハト」

 荒い吐息。汗ばみどろりと澱んだ空気。高まる熱。青臭い匂い。なんてことのない、ありふれた自慰行為。それを異常な状況とせしめているのは、一方的に暴かれ穢されながら未だ何も知らぬまま規則正しい呼吸で眠り続けている彼女の存在。
 子どもじみた裸体は女どころか人間でもない別の生き物のようにすら見える。男でも女でもない、何かとんでもなく綺麗であまりにも遠い生き物に。
 欲望のまま吐き出された体液に塗れていようとも彼女は綺麗だった。如何なる劣情も彼女を真に損なうことなど出来はしないのだ。出会った時から変わることなく。
 ただそこに在るだけで美しく、故に憎らしい、彼女。ヴァイルの大切な大切なただひとり。
 鏡の向こうの映し身とも精神の双子とも思った記憶は今もせつなく鮮やかに息づいているというのに、辱めれば辱めるほどにその身は見えない薄布に包まれてどんどん隔てられてゆく気がする。
 すでによく心得た行為に勤しむ合間、ヴァイルは口の端をゆるく歪ませた。
 綺麗すぎる彼女が、どうしようもない自分が、可笑しくてたまらなかった。
 痙攣じみた笑い声を部屋の中に響かせながら、ふと思い出す。この浅ましい秘め事を始めるほんの少し前の光景。すでにぎりぎりのところまできていた均衡を崩した最後の一押し、その瞬間を。

「『友とは必ず同じ職に就くべし』なんて法律ある? ティントアはティントア、僕は僕。ディットンまで追いかけたりなんてしないよ」
 正直酒に紛らせでもしなければ耐えられぬ程の痛みを噛みしめて発した問いは、あっけらかんと切って捨てられた。ひとの気も知らぬげに蜜酒をくぴっと飲み干す彼女をあの時の自分は些か恨めしげに睨んだものだった。
「じゃあどうしてレハトはここにいるんだよ」
「君がいるから」
「はぁ? レハト理論じゃお友達は離れ離れになったって平気なんだろ。思いっきり矛盾してるじゃんそれ」
「だってヴァイルは危なっかしいんだもの。放っておいたら変に悟った神様みたいになっちゃいそうで。だから僕はずーっとヴァイルの傍にいてヴァイルは人だよーって言い続けてやるの。別に神様も嫌いじゃないけど、人と比べてどっちが好きかって言ったら僕は人の方が好きだから」
 彼女は杯を置いてにぱっと笑った。こういう表情をすると一層際立つあどけなさに空恐ろしさすら覚えた。外見など関係なく、彼女の心そのものが未だ子どものそれだということを、自分は、誰よりも自分こそが知り抜いていたから。
「なんか微妙に怖いんですけど。俺、レハト好みの男に調教されちゃうわけ?」
「うん。せめて自分の手の届く範囲の世界ぐらい好きなようにしたいじゃない。楽しんだもん勝ち」
 無邪気に微笑む彼女は、ヴァイルが彼女の言うところの『手の届く範囲』に存在することを信じて疑わない程度には傲慢だ。
 きっとどんな場所でも生きていける、正真正銘子どもだった頃の彼女をそう評した過去の自分はある意味正しくある意味間違えていた。
 きっとどんな場所でも、彼女は己を守るための小さな箱庭を組み立てることができるのだろう。だからこそ生きていける。そうしなければ……恐らくは。
 少し、哀しくなった。
 理解できてしまうのは、彼女が確かに自分と同じものだったからだ。そんな彼女を愛していた。否、愛している。そのはずなのに、共に作った箱庭を大事に庇い合うような愛が自分にとってだけ大きく変容してしまったことも分かっていた。
 ───明るすぎた月の下、色めいた気配の欠片もなく彼女と連れ立って歩いていたあの神官は、彼女と同じ箱庭を共有できている人間なのだろうか。それとも彼もまた己だけの箱庭を抱いているが故の、共感なのか。遠目にも知れた気安さ、互いを自然にごく近しい存在としているのがはっきりと分かった、あの距離感は。
 どちらにしてもあれにはひどく打ちのめされた。滑稽なぐらいに。分かった、見えてしまった。
 自分はもう、あんな風に傍にはいられない。
「……約束」
「え?」
「嬉しかったんだ。ずっと一緒にいようって誓えて。ねえ、僕がどんなに嬉しかったか分かる?」
 ひたりと揺るがず、だが赤い色づきとどこか合っていない焦点で酔っている目だと分かる。酒に紛らせた切実さが痛い程に過去の自分に重なって、俄かに生じた後ろめたさに引き摺られるように指先が震えた。
 ずっと。
 ずっと一緒に。
 そう、彼女が傍にいる限り、ヴァイルは嘆く子どもにも諦めた大人にもなりはしないだろう。それは、それだけで、胸が灼かれる程に涙が出る程にしあわせな奇跡だ。それなのに。
 かけ違えた愛を修正するための最初の一言を、ついにヴァイルは口にすることができなかった。

 ───俺はあんたの物じゃない。

 当たり前のこと。単純な言葉。
 かつて世界を壊された悲しみと絶望に泣いて泣いて泣き喚いた子どもが、その一言を言わせなかった。
 たぶん、それが最初の過ち。
 正す術も見つからぬまま焦燥に駆られ薄ら寒さに震えて、それでもヴァイルに出来たのは手を伸ばすことだけだった。


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自己完結型同士がつるむと後々厄介なことになるかもよ、という話(エー)
なんだかもう本当にすいません。
書きたい部分はもう大体書ききったんで、一応これ以上事態は動かない。勿論あんなこといつまでも続けられるわけねーんだけど。

……ボーダーラインってめんどい。

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