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不定期雑記。ひとりごとやもえがたりなど。リンクフリーです。
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放置プレイかましちゃった前科があるからもう続きものはやめとこうと思ってたのにー。のにー。

続きから、ティントア友情C後、ヴァイルと主人公…の予定の前ふり、ティントアと主人公。


 大神官長を護衛の神殿衛士と共に送り出した後もティントアは部屋に留まってくれた。
 久方ぶりの友との再会なのだからと大神官長が計らい、そしてティントアも僕も望んでいた。いま少しの気の置けない語らいを。
 互いの近況報告から始まった話は尽きることなく、けれど如何なる幸いにも終わりは必ず訪れる。そろそろ彼も退出しなければならない刻限が迫ってきた頃、ふと思い立って外へと散歩に誘った。
 夜の中庭を、二人歩く。
 月明かりに浮かぶ闇色の空間が柔らかく穏やかで、傍には心許せる人がいる。世界はどこまでも満ち足りていて美しい。
 つまるところ僕はとても幸せだ。
「レハト。レハトは変わらないね。大人になっても、全然」
「それ、僕としては不満が多々ある事実だよ。一月かけて痛い思いもいっぱいして体を作り替えたっていうのに損した気分。ヴァイルなんてあんなに背が伸びたのに」
 口を尖らせ夜空に手をかざす。
 籠り前と比べてもほとんど差異の見られない、ちいさな頼りなげな手。僕はいわゆる成人後も容姿が大して変わらなかった口だ。体つきだって相変わらずぺらぺらの棒きれみたいで、見下ろすことより見上げることの方が遥かに多い。陛下の胸を切なく見つめて笑われるのはまだいいが(いや本当はかなり良くないけど)渉外官として様々な人間と渡り合ってゆくこれからの日々を思うと少し気が重い。何だかんだ言って外見で効かせるはったりというものも交渉事においては重要な要素だ。
 ティントアはぱちぱちっと瞬き、僕を頭の天辺からつま先までゆっくり眺めた。
「……小さい」
「正直な意見をありがとう」
「見た目のことは僕にはよくわからないけど……レハトは、変わってないよ。本当に。僕の大好きなレハトのままだ」
 薄闇に溶けるような微笑みを浮かべて僕の大好きな親友がそんなことを言うものだから、叶うものなら天におわすアネキウスを一発はたきたくてならなかった手も下ろさざるを得なかった。
 まあ良しとしよう。月は綺麗で、頬をくすぐる夜風は優しくて、こんなにも幸せなのだ。
「陛下───新しい方の陛下、は、変わった」
 夜の静寂には小さな呟きもよく響く。……でも。それだけじゃない、断言めいた強さもその呟きには含まれていた。
「僕、レハトと……殿下、だった頃の陛下が一緒にいるのを見るの、好きで、苦しかった。まるで僕ともうひとりみたいだって思ってたから」
 意外な言葉に軽く目を瞠る。そういう風に見られていたことにも、明らかに過去を語っている風な彼の口ぶりにも。
「今は違うの?」
「……僕はレハトが変わらずにいることが嬉しい」
 問いかけに返ってきた言葉は答えの態を為していないが、非常に真摯ではある。彼との会話ではよくあることだ。
「きっと、それはとてもすごいこと。だけど……」
 ティントアはもどかしげに言い淀んだ。彼自身、伝えようとしている事柄を上手く表す言葉を見つけられないでいるようだった。
 無理に先を促そうとはしなかった。
 取り繕った言葉で人を動かすことに自分がそれなりの才を有しているらしいと気がついた時、同時にそれらを決して好いてはいないことにも気がついた。矛盾しているけれどありふれた話だ。できることと好きなことは違う。
 言葉は武器で、だから戦う必要などない相手の前では何の意味もない。
 大事なのは、薄闇を介して伝わる優しさだとか。合わせた掌の温もりだとか。そんなごくごくささやかな得難い幸せばかりだ。
「僕は幸せ者だね、ティントア。一緒にいるだけで世界が綺麗に見えるひとが二人もいる。こんなに幸せなことはないって思うんだ」
 立ち止まって夜空を見上げた。今夜は月がとても明るい。隣に佇む親友曰くの神の愛はあまねく僕らに注がれている。
 全てが満たされていた。この刹那が永遠に続けばいいだなんて願ってしまう程に。
「……レハトは陛下が好きなんだね」
「うん。大好き」
 例えば今隣にいるのがヴァイルでも全く同じ幸福に包まれていただろう。迷わず答えた僕に、ティントアは淡く笑う。
「そっか。……なら、いいと思う。それで」
 そして零れるいつもの聖句。花々の甘い香りと共に薄闇を優しく彩り包み込む。
 それがとても心地良かったから、結局ティントアが最後まで伝えなかった言葉について僕は深く考えなかった。
 満たされていたから。何も、知ろうとはしなかった。
 その時、遥か頭上の塔の一室から僕らを見下ろす眼差しがあったことも、何も。


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年齢制限ボーダーラインはクリアできそうと踏んで見切り発車。
「またロリ仕様か」と突っ込まれたら返す言葉もないのでもう開き直り。ロリ大好き!
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現在「冠を持つ神の手」にだだはまり。
二次創作したり人様の二次創作で萌えたぎったり。
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