不定期雑記。ひとりごとやもえがたりなど。リンクフリーです。
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って某魔境の主様が仰ったからやってみた。
続きから神業パラレル設定でタナッセと主人公。
目覚めてすぐに、腕の中の体が呼吸していることを確認する。恒常的な消耗の回復に生命力を費やし続ける生活のせいか年齢にそぐわぬ幼い肢体。尖った肩。肉の薄い肌は削がれたような痛々しさを見る者に与えつつ、触れれば決して硬いばかりではない女の柔らかさを纏っているのを知っている。つい先刻も身を以って確かめた。
伏せた睫毛が痩せた頬に影を落としている。その微細な陰影が呼吸の細波に揺れる様を見るのが数少ない愉しみの一つであるのは、自分の胸の内だけに秘めた事実だ。
───呼吸、している。生きている。腕の中の命は失われていない、まだ。
確認はすでに日課となって久しい。己の罪業の結晶がいま一つの罪の証となってはいないことを見届けるたびにたまらなくなる。安堵と、いたたまれなさと、圧倒的な痛み。絡みついた業の糸はその気になればすぐ断ち切れると知っていながら、今宵も苦痛の源を抱きしめる。眠れる妻の肌は冷えていた。悦楽の熱が去った後の体は、ごく原始的な人のぬくもりさえ与えてはくれない。ただ思い知らされるだけだ、この女が常に死の淵に立たされていることを。
救えない、と自分でも思う。当の相手にも指摘されてしまっている。
『君って被虐趣味でもあるんじゃないの』
……九割九分同意した本心を明かす度量もなく、どこでそんな言葉を覚えてきたと的外れな説教をするのが精一杯だった。心底救えない。
手を伸ばす。顔を寄せる。
合わせた額の感触がむず痒くなるような感覚を生んだ。かつては知らなかった感覚。だが自分で触れなければ知ることもない───今やこの身に触れようとする者達のことごとくは醜悪な権力の亡者でしかなく、触れることを許せる者達にとっては自分もまた唾棄すべき下衆のひとりと成り果てた。
まして、この女にとっては。
処刑台に登らされたも同然の生。己が首に輪縄を巻いて最後の最後で足場を落とすのを気まぐれに引き延ばした執行人に、誰が好き好んで触れたがるだろう。触れる手を拒もうともしない乾いた諦観を、誰が責められるだろう。
唇を重ねて食むように舐める。口内に滑り込ませた舌を無抵抗に横たわる舌と絡め、慣れた感覚に身を任せる。自分の内の不可視の力がするりと動き移ってゆく。水が高所から低所へと流れるように巡る力の循環。そういうものと受け入れてしまえば理解も容易かった。あの魔術師が為した術とやらも、原理を辿ればこの行為と同じことだ。
理解と絶望は、正しく比例して深まっていく。
唇を離す。糸を引く唾液をぺろりと舐めて、ふと泣きたくなった。心が痛くて痛くてたまらない。その上痛みを凌駕する恐怖に襲われて、気が狂いそうだった。
───あと、どれだけこうしていられる?
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中途半端に乙女な王息殿下。
がんばっていちゃいちゃさせてみたよ!片方寝てるけど。
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